「居心地のいい場所」 2007/06/06
医療的な意味の形成手術ではなく、まさに美容のための美容形成(一般的には美容整形だが、整形外科と区別するためにあえて美容形成とする)を行なう医師がいる。個人的には、そういう医師を医師とは認めたくはない。しかし、見た目で得をすることもあれば損をすることもある。自分の見た目で損をすることが多いと感じる人や見た目が勝負の世界にいるモデルなどが、少しでもアドバンテージを稼ぐために美容形成をしようと思うことは当然なのかも。そういった人を実際に助けているのであれば、本当にそれが医師としての医療行為なのかどうかは別として、一応人助けをしていることには間違いない。その行為を善とするか悪とするかは、価値観の違いだろう。
森井良幸というインテリアデザイナーに会ったことがあるが、彼が代表を務めるcafe co.という会社の本の前書きに、「ある友人は300万でクラウンを買い、またある友達はBMWを買った。2人は価値観の違いだというが、僕はそれは趣味の違いだと思った。同じ300万があれば、僕なら会社というものを運転する。この価値観を理解しあえる3人で会社を立ち上げた。」という内容の私が大好きな言葉がある。お金と時間を何かに費やすとき、どういったことを大切にしているかという部分の違いである。
いろんなことに対して人それぞれの価値観があると思うが、大雑把にたった2種類に人間の価値観を分類すれば、上っ面で勝負しようか、中身で勝負しようか、この2つの価値観になるだろう。時間とお金をどちらに使うか、学生の頃、友達が合コンばかりしているのを余所に、すでにその頃今の姿を描いて勉学と人生経験に時間とお金を割いてきた私はもちろん後者で、森井氏と同じである。
しかし、どちらがマジョリティーかといえば、前者である。見た目は清楚で才色兼備を思わせるが、実は中身が無く聞いているこっちが恥ずかしくなるようなコメントをするタレントを集めたニュース番組。美男美女お互い何を好きになって結婚したかは知らんが、価値観の違いですぐに離婚。技術と強さで勝負するのではなく、芸能事務所に入り、見た目としゃべりで勝負するスポーツ選手。本職の仕事内容にではなく、テレビに出て売れっ子になることに精神一到している医者や弁護士。そんな勘違いしている奴らを利用し、番組内容にこだわるより視聴率をいかに上げることが主な目的になっているテレビ番組。参議院選に向け、政治能力うんぬん関係なく票取りだけのために、タレント候補を集めようとする政党、政治家。そして、そういう能無しに投票する能無し国民。日本の世の中8割以上が上っ面ばかりだろう。
先日、シルク・ドゥ・ソレイユがドラリオンの東京公演を行なっていたが、あるきっかけで公演期間中パフォーマー(アーティスト)のケガをみることとなった。シルク・ドゥ・ソレイユは世界からオーディションで厳選されたパフォーマーを抱えるサーカスアートのプロ集団で、なかには五輪や世界選手権のメダリストもいるという。さて、この人たちはどっちの価値観を持った人たちだろう。エンターテイメントという見せ物ではあるが、観客は彼らの努力によって成されるパフォーマンス技術に感動するわけで、その技術を磨き続ける彼らは明らかに中身に価値観を持つ人たちである。価値観が同じプロをプロとして診療にあたるとき、お互いをプロと認め合った最高の共鳴が生まれる。診療をしていて実に楽しい。プロに限らず、箕山クリニックで同じ価値観の職員たちと、私たちのコンセプトに共感して来てくれる患者さん、会員さんを診るのは実に楽しい。脚が良くなってきて、情報収集のため再び街に出かけられるようになってきたが、上っ面マジョリティーと出会ってもムカつくだけ。単なるワーカホリックと言われてしまえばそれまでだが、箕山クリニックはやっぱ居心地がいい。
これからも、相変わらず2割のマイノリティーでいたい。なぜって、7:3横分けならぬ8:2横分けのメインは8でも、そっちの下地にはハゲが隠されている実は中身のないほうだから。

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