年内にも混合診療を解禁すると小泉首相が言っている。といっても皆さんからすればよく意味が分からないし、良いのか悪いのかも分からないというのが現状でしょう。混合診療に関しては賛否が入り乱れており、とくに日本医師会は大反対。しかしながら、「反対、反対って言うじゃな〜い。でも混合診療にしなければならない状況を作ってしまったのはあんた達ですから〜!残念! 医療は営利目的であってはならない!なんて偽善者発言!斬り〜!」なのです。皆さんに、この現状の裏を分かりやすくご説明したいのですが、その前にまずは日本の医療制度と欧米の医療制度の違いを知って頂いたほうが良く分かると思いますので、「混合診療」については次回コラムにします。今回は「日本の医療制度と欧米の医療制度」ついてお話致しましょう。
皆さんご存知でしょうが、まずは日本の医療制度を簡単に分かりやすくご説明致します。日本の国民は皆さんが保険診療を受けることが出来るように、社会保険か国民健康保険に加入していることとなっています。簡単に、お勤めの方は社会保険(会社であれば健康保険組合)、自営業の方は国民健康保険と捉えて下さい。社会保険料はお勤め先でお給料から差し引かれており、国民健康保険料は各自で市町村に支払っているわけです。このように保険に加入していることによって、皆さんは診療にかかられても診療費を全額払う必要はなく、病院・診療所には負担率分(多くは3割)だけ支払えばいい事となっています。残りの患者さんが支払わなかった金額は、病院・診療所が毎月社会保険もしくは国民健康保険に請求し、支払ってもらっているのです。さて、このような支払い制度は分かっているが、診療所開設の仕組みなどはよく分からないのではないでしょうか。実は、日本では医師であれば自由に開業できることとなっています。ですから、医師になってからの更なる資格などは関係なく、医師自身に自信があれば専門とする分野や得意とする分野の診療科目を掲げて開業できるのです。「あれっ、じゃあ何故もっと近所にコンビニのようにいっぱい診療所とかがないの?」と思いますよね。法的に開業は自由でありながら、競争を少なくするためそれを抑えて診療所数をコントロールしているのは、実は各地域の医師会であったりするのです。 こういった不可解なことも次回コラムの「混合診療」で説明するとして、他の国の医療制度もご紹介していきましょう。私が留学していたイギリスでは社会保障がしっかりしていて税金がとても高いのですが、そのかわり国立系の病院・診療所での診療費は全員が無料。何て良いのだろうと思うでしょう、しかしながら無料で診療を受けることの出来る国立病院・診療所はいつも満員。CTやMRIの検査は3ヶ月待ちが当たり前、手術なんて1年後なんてこともある。そのうえ、国立病院・診療所が患者さんへの請求が無料なのをいいことに、必要のない検査を行ったり薬を処方したりして、国立病院・診療所がその多大な診療費を不当に国に請求して儲けることのないよう、疾患ごとに行える検査や処方できる薬が決められてしまっているのです。また、国が認めた国立診療所を開業できるのは、全科目を医師になってからも履修し総合的に広く浅く診ることができる医師のみで、国民はまずそういった国立診療所で診察を受けることになっています。そのうえで、診療所の医師が専門の医師に診てもらったほうがいいと判断した際に、始めて大きな国立病院に行くことが出来るのです。このような制度であるため、医師は診療にお金はかけられないし、患者さんはすぐに専門医を選んで診てもらうことができないで、良くならない人がいっぱいいるわけです。そこで、国が関係しないプライベート病院・診療所というのがあり、お金持ちの人は無料ではなく診療費を支払ってまでプライベート病院・診療所で診てもらっているという現状なのです。ただ全くの自費だとすごい金額になってしまうので、そういったプライベート病院・診療所が好きな人たちは、各自で保険に加入しておりその保険で診療を受けるのですが、保険会社から紹介された病院・診療所にしか行けないのが実際なのです。つまり、保険会社と病院・診療所がグルになっているわけです。一見良さそうで良いとこなしのイギリスの医療制度なのですが、唯一良いところを挙げるとすれば、医師が診療にお金を掛けることができないので、少ない検査で診断をつけようと整形外科に関して言えば診察手技を多く持っているということだと思います。だからといって、イギリスの医師が日本より優れているとは思いませんでしたが。あっ、失礼、日本の医師よりは優れていたかもしれませんが、少なくとも私よりは劣っていました(笑)。 では、最後にアメリカの医療制度を説明いたしましょう。アメリカは国が保障する保険は一切なく、皆が各自で保険に入っていなければなりません。なので、保険に入るお金のない人が、万が一病院・診療所に掛からなければならないことがあると、全額自費になってしまうのです。訴訟問題だらけのアメリカですから、極端な話、救急であってもまずは保険に加入しているかどうかから患者さんに聞き、入っていなければ多大な金額が掛かってしまうので、「この治療を行えばあなた生きます。行わなければ死にます。さあ自費ですがどうしますか?」なのです。実に恐ろしい。保険会社と病院・診療所がグルでお互いを紹介し合っているのは、イギリスのプライベート病院・診療所と同じです。また、診療所を開業できるのは、これもイギリスと同じである一定基準をクリアした広く浅く診ることができるファミリードクターなのです。よって、確定診断や的確な治療を受けられるのは遅れがちなのです。
大変長くなりましたが、分かりましたか。日本の医療制度は、誰でも開業できてしまうので大丈夫かと思うところもあるでしょうが、皆さんが自分の意思で病院・診療所を自由に選ぶことができ、すぐに専門的な診療を受けられるというメリットがあるのです。また、一部は支払いがあるものの保険制度がきちんとしていて、診療費が莫大に掛からないというメリットもあります。ただ、あくまで皆さん自身がしっかりと良い病院・診療所を見極めなければなりません。皆さんが賢くなるしかないのです。今回、日本の医療制度を他の国と比べることによって理解していただいたうえで、次回コラム「混合診療」にて日本の医療の裏側を斬り、良い病院・診療所の見極め方も併せてお話しすることと致します。
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