2013年06月01日 アーカイブ

箕山スポーツ医学塾(File №21):有鈎骨骨折(疲労骨折)hook of hamate fracture

 解剖学的部位(Kaplanのcardinal line=[手掌𣓤側縁と母指尺側縁の交点から、中央手掌ヒダに並行に引いた線]と環指尺側縁の延長線が交わった所)に圧痛がみられます。
 Pull Test(環・小指を屈曲させ、手関節を尺屈させると疼痛が誘発される) は感受性が高いとされていますが、hookは環・小指屈筋腱の滑車の役割をしているので、尺屈させなくても抵抗下に疼痛が誘発されます。
 hookは小指球筋の起始部であるため、小指外転抵抗下にも疼痛は誘発されます。
 尺側手根屈筋は、豆状骨に停止したあと腱性にhookにも付着しているため、経験例では同筋の抵抗下にも誘発痛がありました。

注:疼痛は、Guyon管を走行する尺骨神経に沿って放散するためか、hookの位置ではなく、手関節尺側に訴えます。したがって、TFCC損傷と間違えないよう注意が必要です。

当院では、これまでに4例経験しました。
野球:1例  テニス:1例  サーカス(プロ):1例  一般外傷(転倒で手掌をついた):1例


画像のように、適切なポジションで撮影できるとレントゲン画像のみで確定診断は可能です。

箕山スポーツ医学塾(File №22):足根骨癒合症 Tarsal coalition

足根骨癒合症 (Tarsal coalition)は、発生頻度が1%以下のとても稀な疾患とされています。距骨・踵骨、踵骨・舟状骨での発生が最も一般的ですが、当院では、これまでに舟状骨・第1楔状骨の癒合症を3例経験しました。
いずれの症例も、保存療法(圧痛と回内・回外ストレスでの誘発痛が減少し、レントゲン画像で不整像が改善するまでの運動禁止)にて、疼痛なく競技に復帰することができました。

完全復帰に要した期間は以下の通りです。
 12歳 男 サッカー:4週
 13歳 男 サッカー・ハンドボール:8週(写真の症例)
 13歳 男 野球:5ヶ月

足根骨癒合症(Tarsal coalition)は、明確な原因は分かっておらず、先天的とされていますが、今回の症例では、いずれもタイトネスが原因による足関節背屈不足と内側アーチ低下がみられました。これらが要因となり繰り返し同関節に負荷がかかっていたことが考えられます。
手術を推奨する文献もあるなか、保存療法で競技復帰ができました。今回の発生部位に限ると、個人的には後天的な一種の離断性骨軟骨炎のような病態なのではと考えています。

箕山スポーツ医学塾(File №23):第1肋骨疲労骨折 Stress Fracture of the 1st Rib

当院では、これまで8例(男5 女3)を経験しました。
野球:3例 ソフトボール:1例 テニス:1例
剣道:1例 ボクシング:1例 サーカス(空中ブランコ):1例

中斜角筋、前斜角筋、前鋸筋のエクセントリックな収縮負荷によって発生すると考えられています。
どのような動作で、そのような負荷が発生するかは上記競技種目より想像出来るかと思いますが、
第1肋骨疲労骨折 (Stress Fracture of the 1st Rib)では、同部位に疼痛を訴える場合は少なく、大抵の場合、肩を動かす動作や深呼気時に肩甲骨の周囲に鋭い痛みが走ると訴えます。
このスポーツ障害を見落とさないポイントは「競技種目」「背部や側胸部に症状を訴えるが、そこには身体所見が無い」の2点です。