2012年10月15日 アーカイブ
箕山スポーツ医学塾(File №18):「アスリート貧血」と「慢性運動性コンパートメント症候群」
Athletic anemia sometimes shows the common symptoms with Chronic exertional compartment syndrome ?
Key words : female athletes bilateral leg
臨床において、運動をする事により下腿後面が全体的に張って痛くなると訴える症例は少なくないと思います。
まず考えられるのは「慢性コンパートメント症候群」です。筋膜のstiffnessから運動後に筋内圧が上昇するという組織的特性により発生します。両側発生が75-95%と言われています。
慢性コンパートメント症候群と同様の症状を呈する疾患としては
① Medial tibial stress syndrome (MTSS:シンスプリント)
② 脛骨・腓骨の疲労骨折
などがあります。この場合は障害発生側のみ発生することが多くなります。
臨床経験からもう一つ鑑別しなければならない疾患として
③ アスリート貧血があります。(文献報告はありません)
運動をする事により筋が低酸素状態になるためでしょうか、両側にコンパートメント症候群と同様の症状を訴えます。
その様な症例があることを、以前に勤務していた病院の部長から教わって以降、女性のアスリートで同様の症状を訴え、MTSSや疲労骨折を合併がなく、両側性である場合には、眼瞼結膜の充血を確認するようにしています。(赤みがなく薄桃色は貧血)
当院では、これまで血液検査で確定診断した症例は5例。いずれも10代前半女性で、4例が両側で合併症なし。1例が片側で疲労骨折の合併症がありました。血液検査を行わなかった症例のなかには、テニス1例、剣道1例、ともに前腕コンパートメントの訴えという症例もありました。確定診断したすべての症例において、鉄剤投与による症状改善がみられました。
【投稿コメント:athletic trainer】
慢性コンパートメント症候群とシンスプリントや脛骨・腓骨の疲労骨折の発生機転と同じなのでしょうか?シンスプリントなどだと、Overusesや荷重時の踵骨の過回内などを評価時に確認したりするのですが
【箕山クリニック:Doctor】
慢性コンパートメント症候群とは、運動により筋がパンプアップした際に、筋膜の伸張が小さいので、筋の内圧が高まり疼痛が発生する疾患なので、オーバーユースで炎症起こすような発生機転というものはありません。
同様の症状を出すのものとして、MTSS(シンスプリント)や脛骨・腓骨疲労骨折、アスリート貧血などがあります。
例としては、脛骨下1/3に疲労骨折が発生していて、そこから骨膜の腫脹が筋にまで広がり、コンパートメント症候群のような症状を示すことがあります。
【投稿コメント:M’s AT project athletic trainer】
体質により筋膜が硬い場合は、全身の筋膜も硬くなる傾向があるのでしょうか?それともよく負担のかかる部位が硬くなりやすい傾向があるのでしょうか?
【箕山クリニック:Doctor】
中学生以降になってから症状を訴えることを考えると後天的なのだと思いますが、両側発生が9割と考えると組織特性だと考えられます。下腿はコンパートメントが狭いという事もありますが、やはり負担のかかりやすいところということで下腿なのだと考えます。また多くの患者さんが、下腿三頭筋が大きい傾向があるように思います。
【投稿コメント:M’s AT project athletic trainer】
疼痛の訴え方はいかがでしょうか。一度痛くなるとずっと疼痛レベルが一緒なのか、それとも運動すると痛くなるが翌日には痛くなくなるなど如何でしょうか。
【箕山クリニック:Doctor】
慢性コンパートメント症候群とアスリート貧血は同様で、運動によって疼痛が発生し、運動後数分経過すると疼痛は緩和しますが、張りは少し残る様です。下腿の疲労骨折の場合は、運動後数時間経過しても疼痛があり、腫脹が原因による症状なので運動後でない診察時でも触診での張りがあります。
【投稿コメント:M’s AT project athletic trainer】
過去に何例か下腿前方の慢性コンパートメントと思われる選手に遭遇したことがあります。前方は区画が狭いためか疼痛は運動後もほぼ変わらず継続といった様相でした。治療として各種物理療法、鍼などを実施→効果なし、注射針によるドレナージ→ほとんど廃液されず針を刺した傷の疼痛が残存、そこで試しにHBOに行かせた所著効!(HBAは変化無し)という経験があります。他に短期的に疼痛を改善しうる方法は何かあるのでしょうか。
【箕山クリニック:Doctor】
基本的には物理的な問題ですから保存的療法の効果はありません。内圧測定して適応であれば筋膜切開という方法が主です。
箕山スポーツ医学塾(File №19):大腿骨疲労骨折Stress fractures of the femoral bone
よく診察すれば、意外と見つかる大腿骨疲労骨折。当院において、2004年から確定診断したのは23例(骨幹部20例 頚部3例)です。そのうちX-ray(骨膜反応)のみで診断がついたのは16例。 MRI撮影を要したもの7例。
① 発生部位に関係なく近位~遠位のあらゆる部位に疼痛を出す。
② 大腿部の筋が張って痛いなどの訴えがあり、触診で確かに筋の硬さがみられるが、ストレッチ痛や抵抗下痛はみられない。
③ その部位もしくは対側(外側に張りを訴えていれば内側)から、深く骨に達するまで圧すと強い痛みを訴える。(Fulcrum testよりもはっきりと疼痛が誘発される。)
④ 運動後、安静時痛もある。
⑤ ホップで疼痛がある。
などの特徴があります。
これらの所見がみられるときは、X-rayを3もしくは4方向で撮影すべきだと考えます。
よく見れば、わずかな骨膜反応も見逃すことはないと思います。
箕山スポーツ医学塾(File №20):膝蓋骨疲労骨折 stress fracture of the patella
比較的稀な疲労骨折。当院でも、疑わしい症例はいくつかありましたが、X-rayだけで確定診断できたのは、写真の3例だけです。
症例1:女子サッカー(大学生)
他院でジャンパー膝と言われプレーを続けていたら、ストップ動作の際にバキっと裂離骨折となってしまった症例
完全癒合するまで19週も要しました。
症例2:女子陸上長距離(高校生)
1ヶ月前から疼痛とのことで来院。疼痛を我慢して練習していたため大腿四頭筋の委縮もみられた症例
X-rayでわずかに骨折線が確認できました。
症例3:男子陸上長距離(大学生)
疼痛出現から8週で、X-rayに硬化がみられた症例。
いずれの症例もジャンプ競技ではありませんでした。patella tendinopathyとの明らかな違いは、膝蓋骨そのものの直上(下極が多い)に強い圧痛がみられるとことです。
【投稿コメント:Doctor】
年齢はいくつくらいですか?
【箕山クリニック:Doctor】
症例2が高校生で、症例1、3が大学生です。
【投稿コメント:trainer】
以前、私がみている患者さんで、整形外科にて同疾患と診断をうけ、長期間ギプス固定後に、治療・リハビリで来院された方がいました。ドクターからは固定期間中は動かさずにとの指導があったとの事なのですが、実際に注意しなくてはならない事などがあれば教えて下さい
【箕山クリニック:Doctor】
私は疲労骨折にて保存治療する場合は、部位に関係なく固定は行いません。
骨の組織学的な治癒時期とレントゲン所見を合わせ、骨へのメカニカル負荷を考慮し、段階的に動きの許可を出していくだけです。膝蓋骨に対しては、各動きで大腿四頭筋の収縮がどのように起こるかを考えていくだけだと思います。
【投稿コメント:Doctor】
要因はやはりtightnessでしょうか?…フォームやシューズなども要因でしょうか?
【箕山クリニック:Doctor】
症例1の女子サッカー選手は、tightnessがみられました。
症例2の女子中距離の選手は、評価できないほどに、疼痛と筋萎縮が強い症例でした。
症例3の男子長距離の選手は、蹴り出しの右ではなく、軸となる左側でした。大学駅伝の全国レベルの選手で、アップダウンの走行練習も、もの凄くハードにこなしているので、下りでのQuad.のeccentric過負荷かもしれません。ちなみにこの長距離選手は、大腿骨の疲労骨折の既往もありました。
New Entries
ARCHIVES
CALENDAR
診察のご案内
午前 10:00~13:00
午後 16:00~20:00
月曜日12:30~16:30
土・日・祝日は、午前のみ
水曜定休