2012年06月03日 アーカイブ

箕山スポーツ医学塾(File №16): 腓腹筋収縮は再建ACLへ負荷がかかるか?

最近の膝ACL再建はdouble-bundle(二重束)で、解剖学的走行を再現できるようになりました。したがって、再建後athletic rehabilitationにおいて過去のように神経質にならなくても再建靭帯が弛緩してしまうようなことは少なくなったように思われます。
現在もrehabilitation protocolは重要ですが、以前は今以上に「何週まで○○禁止」など厳密に守ったものです。私も基本的protocol以外に、10週(remodeling期)ぐらいまでは「calf raiseは禁止」といったオーダーを出していたこともありました。理由は、以下の文献にあります。

Voluntarily Evoked Positive Lachman Test Produced by Gastrocnemius Muscle Contraction (AJSM, Vol.28, No.6 2000 : Noda et al.)

ACL欠損患者が、随意的に脛骨の前方引き出しをできるという症例報告です。
Mechanism
①  腓腹筋の収縮で大腿骨が後方に引かれ、相対的に脛骨前方引き出しがかかる。
②  腓腹筋の収縮自体が脛骨を前方へ押し出す。
このことから、腓腹筋エクササイズは再建靭帯にも悪いのではないかと考えたからです。それぐらいsingle-bundleやdouble-bundle初期のころはrehabilitationに気を使ったものです。現在でも、M’s AT projectのtrainer達はathletic rehabilitationでこれを守ってくれているかもしれません。

【投稿コメント:M’s AT project athletic trainer】
現在はこの事も頭にはありますが、進め方については以前と少し違った考え方になっています。以前は全ての事を出来るだけ早くなんて考えていましたが、今は最終ゴールがいついつなので、始めるのはもっと後でいいと考える部分もあります。最終ゴールが早まるならいいのですが、ACLに関して早まる事は基本無いと思うので、ゴールを遅らせない為にはどうすべきかという視点の方がやるべき事とリスク管理の両方に目が向きやすいような気がしています。
【箕山クリニック:Doctor】
そうですね!復帰を急ぐ場合のBTB法 (Bone-Patellar Tendon-Bone:骨付き膝蓋腱移植法 )は別ですが、手術方法は進化しても組織修復過程は変わらないので、安全確実に復帰8ヶ月は変化しないですね

箕山スポーツ医学塾(File №17): 腓骨筋腱(短)の縦断裂Longitudinal tear of peroneal tendon(brevis)

腓骨筋腱(短)の縦断裂は、腱の完全脱臼が起きていなくても、亜脱臼状態であると腓骨筋腱溝の縁へ短腓骨筋腱が長腓骨筋腱に圧迫されることで生じます。
写真は文献から引用した術中所見です。MRI(magnetic resonance imaging)ではaxial view(横断像)で短腓骨筋腱が縦断裂をきたしている部分で扁平化しブーメラン型にくびれているのが見られます。
足関節ATFL(前距腓靱帯)不全などが関与していることもあり、理学療法やステロイド注射などの保存的治療で対応可能なことが多いですが、難治性のものには縫合術が行われます。

Peroneus brevis tendon tears may be caused by subluxation of peronael tendon and compression from the peroneus longus tendon lying posteriorly to the sharp posterior ridge of the fibula.
The MR imaging shows boomerang-shaped or bisected on axial levels.

参考文献
AJR 1997 (Schweitzerら)
Foot Ankle Int 2000 (Majorら)
BJSM 2002 (Minoyamaら) etc