2012年05月16日 アーカイブ

箕山スポーツ医学塾(File №12):姿勢によるタックルの違い

Good posture may reduce the cervical injuries in American football
胸椎後弯(不良姿勢)はこんなスポーツ外傷にも影響!?

 

姿勢不良とspearing(スピアリング)(写真左)と、良い姿勢と額部より当たる良いタックル(写真右)
※ スピアリングとは、タックルの際に頸椎外傷のリスクが高まるため禁止されている頭頂部よりヒットする行為 Torgがspearing禁止を決めてから、圧倒的に頚椎・頚髄損傷の発生率は低下

【箕山クリニック:Doctor】
 不良姿勢は、パフォーマンス低下やあらゆる部位の障害へ繋がるだけでなく、アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツにおいて、よくみられる頸椎外傷やバーナー症候群のような急性外傷にも影響するかもしれません。
 バーナー症候群を繰り返す選手がよく言うのは、「オフ(シーズン)には、頚部周囲の筋力強化もしたし、自分ではちゃんと額でヒットしているつもりなのに、ビデオで見てみるとスピアリングになってしまっている」そんな選手に特徴的なのは姿勢不良です。頸椎アライメントの問題が要因としてよく挙げられますが、こういった外傷も局所だけに注目せず、胸椎後弯による同レベルのmobilityを改善し、core stabilityを上げることで、予防できるのかもしれません。

‐・‐余談‐・‐
 バーナー症候群の主な原因は、腕神経叢の牽引負荷です。牽引負荷により腕神経叢の上部C5が損傷を受けるため、deltoid(三角筋)、biceps(上腕二頭筋)、supraspinatus(SSP:棘上筋)、infraspinatus(ISP:棘下筋)などC5支配筋のMMTが低下します。そのなかでも最後まで筋力低下が残るのはSSPとISPです。意外と見落としている場合があるので注意が必要です。両筋とも肩甲上神経支配ですが、この神経枝はちょうど牽引が一番かかる部位でC5より上方へ分枝しています。バーナー症候群が牽引負荷であることの裏付けと考えられます。

【投稿コメント:理学療法士】
アメリカンフットボールではブルネック姿勢という肩すくめ姿勢で頸椎を守る方法があるらしいですね。ある研究ではブルネック姿勢で額への後方外力に対し頭部後方加速度の低下が認められていますが、胸椎後弯の強い人には逆に不良姿勢を助長してしまうこともあるのだろうかと疑問に思いました。先生の実例に基づくお話は勉強になります。

箕山スポーツ医学塾(File №13):Iselin's disease (Apophysitis of the base of the fifth metatarsal)

【箕山クリニック:Doctor】  Iselin's disease(イセリン病:第5中足骨粗面骨端症)とは、サッカーなどカット動作の多いスポーツでみられる骨端症です。 短腓骨筋腱の牽引負荷により発生すると考えられており、運動を制限すれば3~6週で改善します。レントゲン上での改善がみられなくても、身体所見での改善がみられれば、復帰させて問題のない疾患です。  スポーツ整形外科分野においては、珍しい疾患ではありませんが、今回の症例(11歳 男性)では反対側(右)の第5中足骨にも障害が発生しており、そちらの発生部位が小児において珍しい症例であったので紹介します。
   

11歳 男性の右足のレントゲン写真

 外傷歴はなく、左側同様に数カ月前より疼痛があるとのことで、来院されました。ドリリングをするべきかどうか悩みましたが、初診より2ヶ月後、圧痛や腓骨筋抵抗下痛が消失したため、悪化するようであればドリリングしようということで、復帰させてみました。1ヶ月後(初診より3ヶ月後)に確認したところ癒合していました。
This apophysitis is caused by traction of peroneal brevis and is often seen in cutting maneuver sports. This case also had the contra-lateral side (right) 5th metatarsal injury and it occurred at the rare portion in children sports injuries.
Iselin's disease? Jones' fracture? avulsion fracture?(no history of the ankle sprain)

This x-ray is the right 5th metatarsal of the patient who had the left Iserin’s disease, which was reported last time. This was not acute injury and he did not experience the ankle sprain before.
The pain was not aggravated by the physical examinations after 2 months, however the surgical treatment (drilling) was supposed. Hence, he returned to play football and the x-ray showed the callus after 1 month.
【投稿コメント:Doctor】
スパイクの使用を禁止することで地面からの衝撃が緩和して痛みが軽減するケースもあります。足部のalignmentが悪い場合はinsole調整や、タイトネスがみられる場合は、ストレッチの指導をしたりしています。
【箕山クリニック:Doctor】
確かにスパイクの影響はあるかと思います。この少年は、外反膝、扁平足でした。その他の症例では、ハムストリングスタイトネスがありヒップコントロールが悪かったり、カーフもタイトネスがあり足関節の背屈可動域制限があるため、トゥーアウトの代償が強かったりなども原因として考えられます。やはり小児は柔軟性向上が障害予防に必要ですね。

【投稿コメント:理学療法士】
立方骨の回外・底屈といった外側アーチのマルアライメントが、第5中足骨に(回旋+曲げ(背屈方向)+牽引)といった複合的なストレスを生み出すとは考えられないでしょうか? 外側アーチを整えることで歩行時痛が軽減する例があります。
レントゲンを拝見しますと、第5中足骨の回外により、第5中足骨底部が荷重ストレスにさらされているようにも見えます。牽引ストレスが主役であることは間違いないとはおもいますが、左右差があるとすれば何かしら別の要因もあるのではないかと考えます。
【箕山クリニック:Doctor】
コメントありがとうございます。我々医師では考察しきれないハイレベルな考察でとても勉強になります。以前投稿いたしました立方骨の障害も含めて外側アーチが関与していると思われますので、今後気をつけて診ていきます。捻挫を繰り返している症例などは、外側アーチのマルアライメントを呈しているかもしれませんね。ありがとうございます。

【投稿コメント:Doctor】
レントゲンでは分節化しているようにみえますが、これは良くあることですか?
【箕山クリニック:Doctor】
10歳前後の時期に、PB(短腓骨筋)のtraction(牽引)で分節化します。結構診ることが多いです。痛みを訴える者から、大した痛みではないので放置する者まで様々なのではないかと思います。うちみたいなクリニックでは、サッカー少年がちょっとした痛みでも来院するので、診る機会が多いのではと思います。不思議と骨片として残ることはありません。今回の症例は、成長が早く、骨化が進んでおり通常よりも治るのに時間がかかりました。
【投稿コメント:Doctor】
以前に成人例の経験があります。遺残した骨片がPBに引かれて、転位したものでした。骨折や過剰骨のOs Vesarianumとの鑑別などを論点の一つにしました。
【箕山クリニック:Doctor】
先生の症例では遺残していたということですね?珍しい症例ですね。位置が違いますがOs peroneumは、もしかして何らかの遺残なのかと思ってしまいますね。

【投稿コメント:Doctor】
今回の症例は本当に外傷の機転がないのですか?骨折線の走行からはIselinでなく、avulsionのようで、治癒機転もまるで外傷のように感じます。
【箕山クリニック:Doctor】
不思議な症例でしたが、間違いなく慢性障害でした。この症例は関東労災スポーツのカンファレンスでコンサルトをしたのですが、JユースをみていたDoctorが、Iselinは何例も見てきたが、これは初めてという症例でしたが、どんなにひどいIselinも勝手に治るから経過を見てみてはということで、それでダメならdrilligをしようということでした。

箕山スポーツ医学塾(File №14):Eccentric loading for Achilles tendinopathy

【箕山クリニック:Doctor】
本邦では、アキレス腱炎(慢性で腱実質に肥厚などがみられるtendinopathy)などの症例に対する保存的治療が普及していませんが、欧米ではスタンダードとなっているエクセントリック・エクササイズを紹介します。私が12年前にロンドンに留学した時すでにスタンダードな治療法とされていました。
プログラムに関しては様々な報告があり、それらを総合した最も一般的なプログラムを掲載します。(Br J Sports Med 2009より)
Conservative treatment of achilles tendinopathy is not popular in our country, however, eccentric loading is considered as a mainstay of non-operative rehabilitation programs for chronic Achilles tendinopathy.
Representative programs reported in comparative studies are the following.

 

Rep.&Sets :15rep×3set   
Exercise : Eccectric loading only (no concentric)
a)knee straight  b)knee bent
Frequency :Twice daily, 7days / week
Duration :10-12 weeks
Intensity :Control parameter (first 2 weeks). Increase load by external loading (backpack or machine)
Post-exercise :Ice and stretch

アキレス腱炎に対するエクセントリック・エクササイズ効果のメカニズム
Mechanisms of the positive effect of the eccentric loading for Achilles tendinopathy
エクセントリック負荷は筋力強化のためではなく、ストレッチのバリエーションと捉えて下さい。
The eccentric loading is not a strengthening program and a unique form of stretching stimulus.

メカニズムMechanism
1. ストレッチ負荷が加わることで、変性し粘弾性が低下した組織に改善が起きる。
Improved homogeneity of the passive structures
2. エクセントリック・ストレッチにより神経反応の変調が起き、最適なSSCが行われるようになる。
Modulation of the neurological stretch responses
3. テンドンとパラテンドン間に剪断負荷が加わることで侵害受容器に変化が起き、疼痛に耐えうる腱となる。
Increased shear forces between the tendon and paratendon structures
等々が、考えられているメカニズムとなっています。


当院での応用
1. entesopathy(肘外側上顆炎やハムストリングス症候群など)
2. 肉離れ後の瘢痕拘縮(急性発症後も、炎症期を過ぎ可動性がでてきた時点から開始)
3. MTSS(Medial Tibial Stress Syndrome いわゆるシンスプリント)
などにも、それぞれの筋にエクセントリック負荷エクササイズを行っています。
 entesopathyには効果がないとの報告が一般的ですが、効果あるとの報告もあります。印象としては、数ヶ月かけて徐々に負荷を増やしていけば、VASゼロにはなりませんが改善していきます。アキレスに関しては、オーストラリアの文献で、バレー選手群のアキレス肥厚が6ヶ月後に正常になったというのがありました。