2012年02月28日 アーカイブ
箕山スポーツ医学塾(File№1):内側型野球肘(内側上顆骨片障害)
File №1:内側型野球肘(内側上顆骨片障害)
【箕山クリニック】
これまで、約200例は見てきましたが、癒合しなかった症例は1例もありません。
離解も大きく、硬化も見られるような症例でも、骨端線が閉鎖していない年齢であれば、必ず癒合します。
上のX-ray(レントゲン写真)の症例(右側:約三か月後)は、やっと仮骨が出てきた状態で、もちろんまだ投球再開の許可は出せませんが、成長期の野球肘は必ず保存的治療で治癒します。
いかに、医師が自信を持って、「必ず治るから絶対許可するまで、投げるのだけは中止ね!」と言えるかどうかです。
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Q
一回の投球動作で剥離したものは手術適応との報告もありますが、しなくても良いですか?また、復帰を決めるのはX-ray(レントゲン写真)ですか?
A【箕山クリニック】
急性の場合は転移の程度次第だと考えています。転移が少なければ、今回紹介したようなrepetitive(反復性)のものよりも、急性のものはすぐに癒合します。また、慢性のものでもMRIで血流の有無を確認して、無ければ手術適応とする報告もありますが、個人的には否定的です。絶対に癒合します。
復帰はX-ray(レントゲン写真)で仮骨が形成されてきたころから、塁間半分の距離(※1)のキャッチボールを許可し、1wごと徐々に距離を長くしていきます。身体所見で疼痛が誘発されなくても、X-ray(レントゲン写真)で完全に癒合してないと、すぐに剥離再発してしまいます。
※1:各塁間が27.413m
箕山スポーツ医学塾(File №2):Osgood-Schlatter病
【箕山クリニック:doctor】
Osgood-Schlatter病は成長期にみられる代表的なスポーツ障害の一つでQuadriceps(大腿四頭筋)の tightness(柔軟性の低下)が原因といわれています。
① 本当にのQuadricepsの tightnessが原因か?
数百例見てきたが、実際にQuadricepsのtightnessがあった症例は片手で数えられる程度で、99%以上の症例でHamstring(ハムストリング)やcalf muscle(下腿後面の筋群)のtightnessがみられます。
この事から、本当の発生機序は、Hamstringなどのtightnessにより骨盤が後傾位となり股関節にて適切な動きが取れなくなることでQuadriceps のeccentricな収縮が強くなり、Quadricepsの付着部である脛骨粗面への牽引負荷が増大するからだと考えています。
Osgood-Schlatter病の原因としてQ/H比(大腿四頭筋に対してのハムストリングの筋力比)の低下があげられます。
② 本当にQ/H比の低下が原因か?
Q/H比の低下は原因ではなく、あくまでも結果としてである。(とくにbony stage(※4)になってしまった青年直前期以降)
Apophyseal stage(※2)Epiphyseal stage(※3)のpain(疼痛)により代償した動作で、Quadricepsを適切に使わなくなり、結果としてQuadricepsの筋力低下がおこります。このような動作ではHamstringの柔軟性の低下を招き、前述のようにQuadricepsのeccentricな収縮が強くなり脛骨粗面への負荷が増大しpain(疼痛)を起こすといった悪循環となります。その結果としてQ/Hが低下してしまいます。
【箕山クリニック:rehabilitation】
治療方針(rehabilitation)
① 思春期
身長(骨格)が急激に成長するこの時期は、筋・腱の柔軟性が低下します。この時期に行うrehabilitationは、特にHamstringの柔軟性を改善させ、股関節の可動性を保つことです。箕山クリニックでは下の写真ようなエクササイズを指導しております。
≪Good morning≫
骨盤後傾しないように注意しながらら体幹を前傾させることによりhamstringのストレッチを行います。
≪Modifiedジャックナイフストレッチ≫
膝の裏で腕を組み、しゃがんだ状態から膝を伸展させます。この時に体幹と大腿部が離れないように注意します。
どちらものエクササイズも3秒~5秒を10回を目安に実施します。
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② 青年期
低下してしまったQuadricepsの筋力を改善させる必要があります。特にeccentircな収縮においてQuadricepsが適切に機能するように、骨盤や体幹、足部の安定性や動的アライメントなどの協調運動を含めて改善させる必要があります。
【箕山クリニック:doctor】
指標
スポーツ医療を行う上で最も大切な事は、”何をやってよくて” ”何をしてはいけないか” の指示です。
ストレッチ痛や抵抗下痛による判断も重要ですが、本来はQuadricepsがeccentircに収縮した状態で疼痛が出るか、その際に股関節や足関節との協調運動がなされているか否かを判断しなければ意味がありません。
私は、「階段の下りで痛む」という状態であれば、ジョギングレベルの動きも一旦止めましょうとしています。
「階段下りで疼痛がある」や「階段下りで不安感がある」は、様々な外傷や障害でも指標として使えます。限られたスペースと限られた時間内で診察しなければならない医師にとって、簡便で有効な問診だと思います。
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